ストーリー
はるか昔、大地が引き裂かれることで誕生した巨大なくぼ地、諏訪盆地。
ここでは古来、鹿を贄とする祭礼が行われてきた。
それを伝えてきたのは全国に1万社ある諏訪神社の総本社、諏訪大社。
この地域の人たちにとって、鹿とはどんな存在なのか?
答えを求めて、600年前に途絶えた謎の「御室神事」を再現する。
それは凍てつく冬、3ヵ月間にわたって行われていたという。
半地下の穴蔵に籠って、鹿の贄を食し、豊穣を願う芸能を奉納していたのだ。
わずかな史料を手掛かりに、神事を司っていた生き神・大祝(おおほうり)、神の使いとされた
少年たちの存在と、正体を明らかにする。
時空を超えてよみがえったのは、穀物と動物の命を重ねる、他に類を見ないいのちへの眼差し。
春が巡り来ると、神前に75頭の鹿が捧げられた。
今でも猟師は、鹿の肉を捧げに諏訪大社にやって来る。そこで手にする一枚の札――、
仕留めた鹿を贄とし、それを人が食すことで鹿が生きる
太古の昔から諏訪の地を支配してきた自然信仰「ミシャグジ」、そして神と仏たち。
それらが盆地の中で重なり混じりあうことで形作られた独特の世界が、今もある。
コメント
なかなか見られない資料的価値の高い映像や、
高度な知識を使って再現された芸能など、大いに参考になるフィルムでした。
ただ一つ残念なのは、このフィルム、
連載で諏訪編描く前に上映して欲しかったです……(笑)
松井優征漫画家・「逃げ上手の若君」作者
敬意を払い寄り添わせてもらうような気持ちで原稿と向き合いました。
この映画に宿るものに触れて、みなさまの心がさまざまにふるえ、共鳴なさるかと思います。
能登麻美子本作語り・声優
今回、このドキュメンタリーのナレーションの一部を担当させていただき、そのオファーをいただいたこと自体、まことに光栄であった。話を聞いて、背筋に青白いような妖しい電流を感じたほどである。
宿神(しゅくしん)は私たちの文化の奥深くにまさに宿っていて、その上に乗る信仰をむしろ言葉もなく支配しているという感覚が、なぜか私にはある。それは諏訪の血ゆえであろうか。
いとうせいこう本作語り
美しい自然の中で、神々と共に生きる現在進行形の人間が、ここになんともていねいに描かれている。
この映画は、さまよえる現代人が、おのれの原点を確認するためにも、一度は観ておくべきものであろう。
夢枕 獏小説家・エッセイスト
『鹿の国』は映像の力によって、これまで霧の向こうの物語として語られてきた物語を、生きた神話として蘇らせようとしたのである。私たちはこの映画を見ることによって、神話の現場に立ち会うという稀有の体験を持つことができるようになった。諏訪の神秘は底しれない深さを持っている。その神秘の一角がこの映画によって、生命を吹き込まれた。
中沢新一宗教史学者・文化人類学者
世界の一点に生き続ける古の心と信仰を深く掘り下げることは、穴が深ければ深いほどやがて地球の裏側に突き抜けるように、一点を離れて世界の人々の心に届くはずである。
諏訪の信仰と祭祀をこれまで理解してきたつもりであったが、この度の映像によりまだ知らない祭祀と儀礼があることを教えられた。穴がまた一段、深く掘られた。
藤森照信建築史家・建築家
伝統の再創造の現場ここにあり。
『鹿の国』で再現された御室の芸能と、復活した「諏訪講之式」は、私たちに諏訪祭政体という磁場の魅力をあらためて突きつけたのだった。
山本ひろ子日本宗教思想史・和光大学名誉教授
北村さんとの出会いはもう50年ほど前にさかのぼります。ともに今井野菊さんに「ミシャグジとは何ぞや」を学び、研究を始めて以来のお付き合いです。
諏訪はまさに鹿の国。高部の家の庭にもしょっちゅう鹿が出てきて、木の実を食べては山に帰っていきました。いにしえの時代も現代も、私たちは鹿と共に生きています。
守矢早苗第78代守矢神長官家当主
冨永 愛(本作語り/モデル)
麿 赤兒(本作出演/舞踏家/俳優)
コムアイ(本作出演/アーティスト)
中沢 新一(思想家)
ひろいのぶこ
(造形作家/染織研究/京都市立芸術大学名誉教授)
四方 幸子
(エコゾファー)
大小島 真木
(アーティスト)
近衛 はな
(俳優/脚本家/詩人)
石川 文江
(本作出演/楮布織)
山口 源兵衛
(本作出演/帯匠)
西川 はるえ
(本作出演/染織家)
妹尾 直子
(本作出演/紙布・樹皮布)